年度末、まとめて職員が退職願を持ってきた。園長就任2年目の3月のことだ。それでも私は、「お前の代わりはいくらでもいる」と思っていた。

年度末、まとめて職員が退職願を持ってきた

当時の私は、30歳手前。

理事長の息子で、やりたい放題だった。

職員はみんなバカだと思っていた。

私は上司、自分の指示や命令を聞かない職員は無能だと思っていた。

その頃、お袋のシンパが私の部下に数人いたので、その人たちがイエスマンで、調子に乗る私を一層輪をかけて調子に乗らせた。

世の中無敵だと思っていた。

客はいくらでもいる、職員の代わりなどいくらでもいる。

集客には困らない、人材なんて誰でもいい、私の言う通りにできるかできないか、それだけが重要だった。

少しでも私に逆らうものは、本当に不愉快だった。

私が絶対だと思い込んでいた。



年度末、まとめて職員が退職願を持ってきた

自分が最高! 自分が一番! それ以外はダメ! 俺の言うことを聞いていればそれでいい!

それしか考えられなかった園長就任2年目の3月のことだ。

介護職員4人、厨房職員2人、看護師1人の合計7人が退職願を持ってきた。

3〜4人の退職者は予測していた。

「やめたい奴はやめろ」ぐらいの勢いだった。

「お前らの代わりはいくらでもいる」ぐらいの勢いだった。

しかし7人の退職は正直きつかった。

それでもやめるやつがアホだと心のどこかで思っていた。

管理職を集めて代わりの職員を確保しろと命令した。

結局誰も成果をあげなかった。

こいつらも無能だと思った。

「それなら俺が人材を集めてやる」そう思ってみたもののハローワークに要請するのと新聞の折り込みに求人広告を出すしか手はなかった。

何度か広告しても、3週間で3人しか集まらなかった。

職員欠員のまま4月を迎えることになった。

年度末、まとめて職員が退職願を持ってきた

結局、職員が全て補充されたのは5月になってからだ。

それまでは、全ての職員に不自由をさせた。

ある介護員が俺に打ち明けた。

「私もすぐにでも辞めたいと思ってます。人手は足りないし、みんな疲れていて人間関係めちゃくちゃです。でも、今のみんなに迷惑がかかるし、なかなかやめるとは言い出せません。でもこのままだと他のみんなもやめちゃいます。やり方変えてみてください。」

正直腹が立った。

「やめたければ辞めればいい。お前の代わりはいくらでもいる!」

喉までこの台詞が出ていたが、やっとの思いで飲み込んだ。

相手の職員は泣いているのだ。

頭が真っ白になった。

何も言えなかった。

正直、自分が退職したい気分だった。

自分がクズだということにようやく気付き始めた。

年度末、まとめて職員が退職願を持ってきた

こんな思いは2度としたくないと思った。

職員が辞めない施設を作るにはどうしたら良いか真剣に考えるようになった。

何度も失敗し、何度も考え直した。

うまくいくことばかりではなかったけど、数年後、離職入りが数%になった。

退職理由は、配偶者の転勤や、結婚などの事情に限られるようになった。

わけのわからない退職は皆無になった。

年度末、まとめて職員が退職願を持ってきた

職員が辞めるのは、必ず理由がある。

職員が辞めるのは必ず原因がある。

職員が辞める施設には、必ず問題がある。

解決しなければ、永久に続く。

しかし、私は断言できる。

解決できない問題はないと。

そして、その解決の最初は、自分自身が問題だと気づくところから始まる。